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田中 一村（たなか いっそん）

日本画家

生没： 1908年～1977年

田中一村は、「日本のゴーギャン」と称される日本画家。

奄美大島の自然を愛し、亜熱帯の植物や鳥たちを独自の色彩で描く。力強くかつ繊細な作風は、それまでの日本画にはなかった花鳥画を切り拓いた。青年期、千葉時代、奄美時代とその年代によって大きく異なる画風に見ごたえがある。

生い立ち

彫刻家であった父・田中彌吉のすすめで幼いころから日本画を学ぶ。幼くして才能を発揮し「神童」と呼ばれ、8歳のころに描いた「菊図」には、父から与えられた雅号「米邨（べいそん）」の落款が認められる。

東京美術学校（現・東京芸術大学）日本画科に入学を果たす。

同期には東山魁夷、橋本明治らがいる華々しい世代だが、父の病気などを理由に2か月で退学する。

特定の師をもたず、日本の文人画や中国の上海海上派などに学ぶ。特に呉昌碩や趙之謙などから強い影響を受け、力強い筆致と伸びやかな墨線が特徴。その後の奄美作品の源流といえる。

千葉時代

30歳のころに、千葉に移住。それから約20年間、農村の風景、自然景色、動植物の写生にひたすら没頭する。

奄美時代

奄美大島に移住。晩年の傑作「アダンの海辺」を描いたのも奄美時代である。絵を描くために大島紬の染色工として働き、営農をして資金を貯め、亜熱帯特有の動植物を描き続けた。

その独特の世界観は生前認められることはなかったが、死後ようやく「孤高の画家」として脚光を浴びる。最後に過ごしたアトリエは「田中一村終焉の家」として移設保存されている。（奄美市名瀬有屋38番地3）