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椿 椿山（つばき ちんざん）

日本画家 崋山十哲

生没： 1801年~1854年

椿 椿山は江戸時代の文人画家である。渡辺崋山に師事し「崋山十哲」に数えられる。
惲寿平（惲南田）の画風に私淑し、没骨法を採り入れた温雅な画調で高い品格を示した。花鳥画・人物画・虫獣画を得意とし、写生と装飾性を調和させた作風で人気が高い。その功績はのちの画壇にも大きな影響を与えた。
俳諧や煎茶などへの造詣が深く、また武術にも長けるなど文武に優れた作家である。

雅号：名は弼（たすく）。字は篤甫（とくほ）。通称を忠太、亮太。号は椿山の他に、琢華堂（たくげどう）、休庵、四休庵、春松軒、碧蔭山房、羅渓、琢華道人を用いる。

【生い立ち】
旗本槍組同心・椿嘉左衛門定重の家に生まれる。父の後を継いで幕府の槍組同心となり、兵学を学び刀槍乗馬にすぐれた。
微禄を補うために絵を学び、はじめ金子金陵に、一時は谷文晁に師事する。17歳の頃、同門であった渡辺崋山を慕い入門した後、同心を辞して画業に没頭し才能を開花させる。

【画業】
崋山から写実性の高い作風を学び、西洋画の繊細な筆による輪郭線や陰影法を習得する。とくに肖像画におけるその技量は近代人物画に通じる画域に達した。

彩色花鳥画の「没骨法」や「たらし込み」は中国明清代の画家たち（惲寿平、徐崇嗣、張秋穀など）から学ぶ。

崋山譲りの画風を継承しながら多くの画技を取り入れ、より柔らかで穏和な色彩表現へと発展させた。門人には、渡辺小華、野口幽谷などを輩出し、「崋椿系」画家の範となった。

【人柄】
温和で忠義に篤い人柄であった椿山は、崋山と深い信頼関係にあった。蛮社の獄（1839年）において崋山が入牢・蟄居の際には、救援運動の中心として奔走する。運動に加わった立原杏所・高久靄厓ら文人仲間たちの行動は、『麹町一件日録』に記録として記され、根本資料として重視されている。
華山没後は遺族の世話も献身的におこなった。実直な人柄は絵画作品からも偲ばれる。